富士フイルムのミラーレス一眼カメラは様々なモデルがリリースされています。大きく分けると中判センサーのGFXシリーズ、APS-CセンサーのXシリーズの2つのシリーズに分けることができます。
Xシリーズ(X-H、X-Pro、X-T、X-E)には、X-Trans CMOSという富士フイルムが独自に開発したイメージセンサーを搭載していますが、エントリー向けのモデルは一般的なベイヤーセンサーを搭載しています。
ここでは、X-T5、X-T4、X-T3、X-T2、X-H1、 X-T30などに採用されてるX-Trans CMOSセンサーと、X-A7・X-T200・X-A5などのベイヤーセンサーの画質・色合い・AFの速度など違いを比較しています。
富士フイルムのエントリーモデルとなるX-A7 レンズキットは8万円ですが「画質はどうなんだろう…」となるかと思うので参考にしてください。
今まで使ってきたカメラを紹介しています。合わせて見て欲しい。
この記事の目次
X-Trans CMOS・ベイヤーセンサーの違いを比較
カラーフィルター配列の違い
一般的なデジタルカメラのイメージセンサーは、2×2の4画素を一単位とした周期的なカラーフィルター配列(ベイヤー配置)ですが、モアレや偽色が発生しやすいという特性があるためレンズとセンサーの間に光学ローパスフィルターを入れることで問題を解決しています。
富士フイルムが開発したX-Trans CMOSは6×6の36画素を一単位とした非周期性な配列にすることでモアレや偽色の発生を軽減させ、光学ローパスフィルターを排除することで解像感と向上させたイメージセンサーとなっています。
個人的にはこういう特殊なイメージセンサーって惹かれるんですよね。
富士フイルムは以前からコンデジでスーパーCCDハニカムという独自センサーを開発していましたが、そういうのに惹かれて富士フイルムのコンデジは3台くらい渡り歩きました。
富士フイルムのXシリーズは2011年からリリースされたハイエンドデジタルカメラですが、独自開発のX-Trans CMOSセンサーを採用したのは2012年2月発売のX-Pro1が初めてです。
以降、X-A以外のXシリーズ(X-H、X-Pro、X-T、X-E)に採用されているものになっています。
写真の質の違いを比較
富士フイルムの現行のXシリーズでX-Trans CMOSを搭載している機種は以下のとおりで、最新のX-T3・X-T30・X-Pro 3は2,610万画素のX-Trans CMOS 4を搭載しています。
センサー | 機種 |
---|---|
X-Trans CMOS Ⅲ(2,430万画素) | X-H1、X-T2、X-T20、X-E3、X-Pro2 |
X-Trans CMOS 4(2,610万画素) | X-T4、X-T3、X-T30、X-Pro3 |
一方で、エントリーモデルとなるX-A7、X-T200は2,424万画素の一般的なベイヤー配列のAPS-Cセンサーを搭載し差別化されています。
センサー | 機種 |
---|---|
正方画素CMOSセンサー(2424画素) | X-A5、X-T100 |
銅配線正方画素CMOSセンサー(2424画素) | X-A7、X-T200 |
最新機種となるX-A7、X-T200はデータ読み出し速度を向上させることができる銅配線されたベイヤーセンサーを採用しオートフォーカスの精度が従来のモデルよりも向上しています。
写真の色合いを比較
「X-Trans CMOSセンサーの方が画質が良い。」
そんな固定概念がありますが本当にそうなのか疑問を感じたので、実際にX-T3とX-A7、X-T2とX-A5で撮り比べをしてみました。まずは色合いの違いから比較してみましょう。
同じ場所で同じレンズ・XF35mmF1.4をX-T3(X-Trans CMOS 4)、X-A7(銅配線正方画素CMOS)に装着してフィルムシミュレーションをクラシッククロームに設定して撮影してみました。
どちらも同じフィルムシミュレーションですが色合いが異なるんですよね。X-Trans CMOSセンサーのX-T3は落ち着いた色合いになるのに対して、ベイヤーセンサーのX-A7は色鮮やかさのある写真に仕上がります。
原色が使われている写真を撮るとその差は歴然ですね。
X-Trans CMOSセンサーは肌色の表現もとても上手で落ち着いた発色に抑えられるので派手さを抑えることができます。ベイヤーセンサーだと白っぽく鮮やかな色合いに仕上ることが多いです。
X-Trans CMOSセンサーは落ちついた発色になるので淡い雰囲気のいい感じの写真になりますね!この室外機の写真もX-A7で撮影するよりX-T3の方がなんかいい感じに見えませんか?
これは、人物撮影でも同じことがいえて子どもの写真も同じように撮影しても、やはりX-Trans CMOSセンサーを搭載しているX-T3の方が肌の質感がスゴイんですよね。
これね、実際に使ってみないと分からないかもしれないです。何がどうって説明は難しいんですけど空気感みたいなものがベイヤーセンサーとX-Trans CMOSセンサーでは違います。
同じレンズを使ってその差が出るって同じメーカーなのに面白いですよね。
他社メーカーはカメラが違って色や雰囲気が異なることってほとんどありませんが、富士フイルムはセンサーの構造自体が違うものを採用しているので雰囲気や色合いでセンサーを選べるのは面白いかもしれませんよ。
こちらはXF16-55mmF2.8をX-T2(X-Trans CMOS Ⅲ)、X-A5(正方画素CMOS)に装着してフィルムシミュレーションをスタンダードに設定して撮影して比較しています。
X-A5の方が青っぽくなっておりX-T2は黄色味がかかっているのが分かります。やはり、X-A5の方が鮮やかな色合いに仕上がることが多く、X-T2は雰囲気のある色合いに仕上がることが多いですね。
どちらのセンサーもキレイな写真を撮影することができますが、味のある雰囲気ある写真(富士フイルムのいう写真画質)はX-Trans CMOSを搭載しているモデルの方が得意としています。
ベイヤーセンサーモデルもフィルムシミュレーション(PROVIA、Velvia、ASTIA、クラシッククローム、PRO Neg、モノクロ、セピア)を搭載しているので好みの雰囲気の写真を撮影できますが鮮やかな色合いとなります。
色の違いでX-Trans CMOSセンサーのカメラにするか、ベイヤーセンサーのカメラにするか選んでも面白いのかもしれませんね。
解像感の違いを比較
X-Trans CMOSセンサーは風景撮影が苦手…と言われることがありますが、ホントにそうなのか。X-A5のレンズキットに付属しているレンズXC15-45mmF3.5-5.6の望遠側で街を一望できる丘から撮り比べをしてみました。(上で紹介した写真の拡大です。)
部分を拡大して見比べてみるとベイヤーセンサーのX-A5の方が解像感が高いように見えます。
X-T2の方が若干暗く写っているのが影響しているのかもしれませんが、X-A5は発色が鮮やかなのでX-T2で表現できていない青色の標識も描画できていたりしていますね。
雪に埋もれてしまった公園を撮り比べしてみましたが、注目すべき点は雪の質感です。
雪の質感もX-T2はのっぺりとしていますがX-A5の方は雪の粒もうまく表現できています。
X-Transセンサーはこのように塗り絵のような表現になったり桜の花がポップコーンのようになってしまうポップコーン現象と呼ばれるものが発生してしまうようですね。(ポップコーン現象はX-Trans Ⅲセンサー以降は少なくなったよう。)
また、後ろにあるネットに注目してください。X-T2はネットの網目を表現できていないのに対してX-A5はしっかりとネットの網目を表現することができています。
X-Trans CMOS Ⅲセンサーは風景描画がやっぱり苦手なのかな?普通はこんなに拡大して見ることはほとんどないから問題ありませんが、引き伸ばして写真にした時にどんな違いが出るのか気になるところではあります。
ちなみに、解像感がX-Trans CMOSセンサーは解像感が低いというわけではなく自然のものをしっかり表現するのが苦手なだけなんだと思います。X-Trans CMOS 4のX-T3とベイヤーセンサーのX-A7で夜の金沢駅を撮影してみました。
同じ設定にしても明るさが全然違いますね…(笑)X-Trans CMOSセンサーは暗く写る傾向があるのでどんな時も雰囲気ある写真に仕上げることができるのはいいところ。
時刻表の部分を拡大してみました。
X-Trans CMOS 4とX-Trans CMOS Ⅲとの違いなのかどうか分かりませんが、このシチュエーションだとベイヤーセンサーのX-A7よりもX-Trans CMOSのX-T3の方が解像感の高い写真を撮影することができました。
RAWだと解像感はほぼ同じ
富士フイルムのカメラ愛が凄いシュンスケさん(@shunsuke333)がX-Transセンサーとベイヤーセンサーについて詳しく解説してくださっています。めちゃくちゃ当ブログの紹介までしてくださってありがとうございます。
X-Trans CMOS IIIがベイヤーセンサーより解像しないという訳ではなく「X-TransもRAWだと解像するよ」だそうです。なるほど。わかりやすい。つまり、映像エンジンの違いによって解像感が違うみたいでRAWで一枚の写真を作り込んでいくのであればX-Trans CMOSの優位性があるみたいですね。
実際にX-T3(X-Trans CMOS 4)とX-A7(ベイヤーセンサー)でRAW撮影をしてみました。こちらは通常のJPEG現像したものです。
同じ設定で撮影してもこれだけ明るさが違うんですよね。夜間撮影はX-A7よりもX-T3の方が圧倒的に扱いやすいような気がします。で、合わせてRAW撮影もしたので現像前の画像を比較してみました。
明るさが違うので全く同じではないですが、どちらもセンサーも同等レベルの解像感を確認できました。(んー、X-T3の方が若干解像感が低いかな?)
なので、X-TransセンサーとX-Processorの組み合わせで独特の解像感・色合いを生み出しているのでしょう。
肌の色合いの違い
さらに、スプラトゥーン2のアミーボを撮り比べして肌色の違いを比較してみました。X-TransセンサーのX-T2、ベイヤーセンサーのX-A5で比較しています。
ガールを拡大してみます。X-A5の方が明るく写っているのも影響していると思いますが、X-T2よりも鮮やかに表現しています。
今回はフィギュアでの比較例ですが、実際に自分の子どもを撮影して見比べてみると、人物撮影についてはベイヤーセンサーのX-A5よりもX-Trans CMOS ⅢセンサーのX-T2の方がいい感じに撮影できていることが多いです。
なんとなく表現が軟らかい感じになるというか。曖昧な表現になってしまってすみません。でも、X-Trans CMOS Ⅲセンサーの配列構造から見ても軟らかい表現が得意そうなのかなと感じます。
高感度耐性の違いを比較
X-Trans CMOS 4センサーのX-T3とベイヤーセンサーのX-A7で金沢駅を撮り比べしてみました。
レンズはXF16-55mmF2.8でISO1600〜ISO25600で段階的に比較しています。
X-T3は同じ設定にしても少し暗い写真に仕上がるので完全比較はできませんが、ISO 12800以上になるとX-A7よりもX-T3の方がノイズ目立つようになります。
意外にもベイヤーセンサーのX-A7は高感度耐性には強いみたいです。ただし、オートフォーカスの精度・正確性はX-Trans CMOS 4のX-T3の方が上なので全体的な使いやすさは間違いなくX-Trans CMOSセンサーを搭載しているカメラの方が良いです。
オートフォーカスの速度・精度の違いを比較
X-A5はX-Trans CMOS Ⅲセンサーと同じ像面位相差AFが採用されてプロセッサ性能も向上しオートフォーカス速度が旧モデルのX-A3と比較して2倍速くなりました。
とはいえ、X-T2などに採用されているX-Trans CMOS Ⅲセンサーと比較するとAFの正確さ、反応、速度は少し遅いです。
X-A5はシャッターを切った時のタイムラグがX-T2よりも少し長いので、ちょこまかと動く子どもの撮影はかなり気を使わないとブレずに撮影するのは難しいですし、暗い場所だとAF迷うことも多いです。
フィギュアという悪条件なので追従性能はかなり悪いですが、顔追従ができる人であればX-A5でもそれなりに追従してくれます。
XーTrans ⅢのX-H1のAFの追従性能はこんな感じです。
X-H1の方がオートフォーカスの追従性は高くなっているのは間違いないですよね。
ちなみに、最新モデルのX-T3のオートフォーカスはさらに精度が向上していて瞳AFにも対応しています。
X-A7もベイヤーセンサーでありながら瞳AFに対応しているのでX-A5と比べるとかなり快適になっていますが、X-Transセンサーを搭載しているX-T3のオートフォーカスの快適性にはかないません。
とにかく、オートフォーカスで余計なストレスを感じたくないならベイヤーセンサーのX-A7よりもX-TransセンサーのX-T3、X-T30、X-Pro 3を選ぶのがいいでしょう。
なお、Canon EOS Kiss X7(1800万画素)は偽色やモアレが出ることが多くX-T10(X-Trans CMOS Ⅱ 1600万画素)の方が画質がキレイでした。Canon EOS 9000D/Kiss X9(2400万画素)になると画質がかなり良くなっていたので、ベイヤーセンサーの性能自体が向上してきているように感じます。
X-Trans CMOS・ベイヤーセンサーの比較:まとめ
X-Trans CMOSセンサー、ベイヤーセンサーの機種で画質や色を比較してきましたが、どちらのセンサーも基本的にはキレイな写真を撮影することができます。
では、X-Trans CMOSセンサーのカメラを選ぶメリットはどこになるのか?実際にX-T3、X-A7の両機種を使って感じる点をまとめました。
X-Trans CMOSセンサーの優位性とは
X-Trans CMOSセンサーを搭載しているX-T3、X-T30、X-Pro 3を選ぶメリットはこんな感じです。
- 落ち着いた淡い色合いの写真を撮影できる
- オートフォーカスの速度・精度が良い
- 暗所撮影でもフォーカスが迷わない
- 基本スペックが高くフィルムシミュレーションも多い
味のある写真画質、オートフォーカスの正確さ、速さ、読み出し速度の速さがX-Trans CMOSセンサーのメリットです。ただし、X-Trans CMOSセンサーはデータ量が多くなってしまうのがデメリットです。
同じシーンを撮影した場合でもこれだけのデータ容量差が出てしまいます。
モデル名 | JPEG | RAW |
---|---|---|
X-A5(ベイヤー・2,430万画素) | 8MB | 43MB |
X-T2(X-Trans・2,430万画素) | 14MB | 50MB |
基本的にX-Trans CMOSセンサーを搭載しているカメラはミドル〜ハイエンドクラスとなるので、フィルムシミュレーションや設定など出来ることは多くなっています。
なので、せっかく富士フイルムのカメラを買うなら機能満載で扱いやすいX-Trans CMOSセンサーを搭載したカメラを選ぶのがおすすめです。
ベイヤーセンサーの優位性とは
ベイヤーセンサーを搭載したX-A7、X-T200を選ぶメリットはこんな感じです。
- 色鮮やかな写真を撮影できる
- 写真データの容量を抑えることができる
- カメラの端末価格が安い
ベイヤーセンサーを搭載しているX-A7、X-T200は上位モデルよりもコンパクトなミラーレスカメラとなっておりX-A7のレンズキットなら8万円くらいで買うことができるリーズナブルさが最大のウリでもあります。
本体サイズにこれだけ差があると画質はいまいちだと思ってしまうかもしれませんが、決してそんなことはありません。ありませんでした。
むしろ、条件が整えばX-A5の方が解像感の高い写真を撮影することもできることもありますし、XC15-45mmF3.5-5.6との相性はバツグンでいつでも持ち運ぶことができるミラーレス一眼カメラとしてはとても良いカメラです。
とくに、旅行で荷物を減らしたい時には重宝するカメラでもありますね。
ただ、ベイヤーセンサーのカメラ子どもやペットなど動体撮影がX-Transセンサーのカメラよりも苦手です。お子さんやペットを撮ることをメインにしたいなら、上位モデルのX-T3の方が失敗の少ない写真を撮ることができます。
なんだかんだ言っても、人物撮影に関してはベイヤーセンサーよりもX-Transセンサーの方が軟らかい雰囲気で撮影できますしね。人を撮影することが多いなら迷いなくX-Transセンサーを搭載したX-T3、X-T30、X-Pro 3を選ぶべきでしょう。
使い方による使い分け
最後にFUJIFILMのミラーレス一眼で、どう選んだらいいのかを簡単にまとめてみました。
- 人物撮影、ペット撮影、動体撮影、動画撮影:X-H1
- 人物撮影、ペット撮影、動体撮影、過酷な場所に行く:X-H1、X-T3
- 人物撮影、ペット撮影、動体撮影、コンパクト:X-T30、X-E3
- 本体デザインがカッコいい、イカしている:X-Pro 3
- 風景撮影、日常の記録、コンパクトさ、動画撮影:X-A7、X-T200
最新モデルのX-A7、X-T200は大型のバリアングルディスプレイを搭載して動画撮影しやすいモデルに進化しています。とくにX-T200は電子ジンバルという強力な手振れ補正機能を搭載したので、価格の安い動画撮影機としても使えるのではないでしょうか。
2018年9月20日にX-Tranc CMOS 4を搭載したX-T3が発売となり、X-T30、X-Pro 3も登場しています。
X-Tranc CMOS 4は2400万画素から2600万画素に高画素化しただけではなく、裏面照射型のAPS-Cセンサーを採用しノイズが低減し高感度にもより強くなりました。
ボディ内手ぶれ補正は非搭載ですが、AFの性能も大幅に向上しているのでかなり魅力的なミラーレスカメラになっていますよ。
https://sin-space.com/entry/xt100-xt20-xa5-spec-hikaku
参考になる比較をありがとうございます。
個人的には、X-T2のほうが全体的に自然な色だと思いました。
比較しないとわからないことだと思うので
こういった比較記事は大変ありがたいです。